【映画】あなたの名前を呼べたなら
インド、ムンバイ。ラトナは裕福なアシュヴィンに仕える住み込みの家政婦。
あらすじ
経済発展著しいインドのムンバイ。農村出身のメイド、ラトナの夢はファッションデザイナーだ。夫を亡くした彼女が住み込みで働くのは、建設会社の御曹司アシュヴィンの新婚家庭……のはずだったが、結婚直前に婚約者の浮気が発覚し破談に。広すぎる高級マンションで暮らす傷心のアシュヴィンを気遣いながら、ラトナは身の回りの世話をしていた。ある日、彼女がアシュヴィンにあるお願いをしたことから、ふたりの距離が縮まっていくが…。
予告
キャスト
ティロタマ・ショーム
ビベーク・ゴーンバル
ギータンジャリ・クルカルニ
感想
この映画はハートフルな映画かと思いきや、人種差別やカースト制度を上手く見せています。
この作品を見る前に予告を見た時ハーレクインコミックス的な御曹司と一般女性のハチャメチャラブストーリーかなと思っていました。
しかし、見てみると全てが繊細なのです。身分の違いとはお金の有無ではなく、出身階級の話で、どう足掻いたって手が届かないものなんです。それが見てるこちらにも伝わってきて切なくなってきます。
同じ屋根の下にいるものの、交わることの無いふたりの関係なんです。ずっと平行線。少し傾けば交わるかもしれないのに、それは社会が階級が許さないのです。
日本で言うなら江戸時代に農民の女性が武家の人に恋をするって感じなのでしょう。2人が見初めあったとしてもそれを家が世間が許さないという感じだとは思います。
歌って踊るだけがインド映画じゃないんだと衝撃も受けました。
格差社会やカースト制度について切り込んでいるそんな作品でした。
ストーリーネタバレ
インドのムンバイにある高級マンションにラトナは仕えていました。主人はアシュヴィンという建築会社の御曹司で明日からアシュヴィンとその妻が住むはずでした。
主人の結婚式の間ラトナは実家の農村に帰郷していましたが突然戻ってくるように言われ、マンションへも戻ります。
アシュヴィンの妻が浮気し、婚約破棄になったと聞かされたラトナはいつものように温かいご飯やアシュヴィンのお世話をします。あまりに落ち込むアシュヴィンにラトナは自分の身の上話をします。
ラトナは結婚して4ヶ月で夫を亡くしていました。村の風習でラトナは未亡人として生きなければなりません。使用人としての給料で妹を専門学校に通わせており、いつかは妹とファッションデザイナーとなりお店を開くことが夢だと語ります。
夫をなくしても頑張るラトナを見てアシュヴィンも徐々に元気を取り戻します。ある日ラトナはアシュヴィンに洋裁の教室に通ってもいいかと聞きます。ラトナの夢を知ってるアシュヴィンは快く認めてくれました。
毎日嬉しそうに過ごすラトナを見てアシュヴィンも自分の事のように嬉しくなります。アシュヴィンも自分にも諦めた夢があったことを思い出します。それは小説家でした。兄が亡くなり会社の跡を継ぐために戻ったアシュヴィンでしたが本当は別に夢を持っていました。
2人の距離は徐々に近づいて言っていました。
ある日アシュヴィンが家で友人を招きパーティをしていると給仕するラトナが女性にぶつかってしまいドレスを汚してしまいます。女性はラトナに詰め寄り怒ります。使用人はあくまで使用人で誰もそれを止めることはしませんでしたが、アシュヴィンは止めに入ります。
友人たちは使用人を庇うアシュヴィンが変に思えて仕方ありません。そのまま解散になってしまいます。
インドには階級制度が根強くあり、下のものは下のものでその地位は揺るがなく差別がいつまでもあるのでした。
アシュヴィンは日々頑張るラトナにミシンをプレゼントします。思いもよらぬプレゼントに嬉しくなり「旦那様、ありがとうございます」と感謝を伝えます。
2人は住み込み使用人ということもあり共に過ごすうちに徐々に惹かれあっていました。ムンバイのお祭りのひ、みな道路で踊ります。ラトナも楽しそうに踊るのを眩しそうにアシュヴィンは見つめます。
ラトナの妹が結婚をするために学校を辞めた事をラトナ走ります。ほんとはファッションデザイナーではなく結婚をすることを望んでいたことにラトナは気が付き傷ついてしまいます。ラトナは結婚式からかえります。
アシュヴィンはラトナが帰宅するとそっとキスをしますが、電話が鳴りラトナは正気に戻ります。身分の違いから釣り合わないとアシュヴィンを拒否しますが、アシュヴィンは「かまうもんか」とラトナに触れます。
アシュヴィンは友人から、ラトナも使用人友達から交際を反対されます。
2人はムンバイの街が一望できる屋上で話し合います。「だんなさまとよばないでくれ」というアシュヴィンにラトナは応えることが出来ませんでした「今夜のことは忘れてください旦那様。」としかラトナは言えませんでした。
アシュヴィンが使用人に優しいという噂が流れ始めます。アシュヴィンの評判が悪くなる前にアシュヴィンの元を去ることにしました。離れがたく部屋で声を押し殺してラトナは泣いてしまいました。
映画あなたの名前を呼べたならより
夢の支援はさせて欲しいというアシュヴィンでしたが「もう連絡しないでください」とラトナは去り、妹ともに暮らし始めます。アシュヴィンは浮気した婚約者とよりを戻せと父親から言われますがずっと窮屈に思っていたこと、ラトナを好きなことをうちあけ、アメリカへ旅立ちます。
そこへ昔パーティーで汚してしまった女性から連絡が入ります。アシュヴィンがラトナのデザインした服をみせ、その女性がラトナのデザインを気にいり共に仕事をしたいという打診でした。ラトナはお礼を言いにアシュヴィンの元へ向かいますが、既に引っ越した後でした。
屋上で呆然とするラトナにアシュヴィンから電話がかかってきます。
「もしもしラトナ?」
しばらく沈黙した後に笑顔でラトナは
「…アシュヴィン」と応えるのでした
解説考察
私なりのストーリーを解説していこうと思います
現在のインドの格差社会
インドのカースト制度は誰しもが聞いたりして知っているかもしれません。しかし現代の話じゃないでしょ?っておもってるかもしれません。
カースト制度は現在も存在します。政府はカースト制度は無くすべきだとしていますが、なかなか無くならないほど根付いているのです。
インドはおもにヒンドゥー教です。そのなかにあるカースト制度があるのです。
現在は都市部では曖昧になってきている部分もありますが、しかし低カースト層の人のことを受け入れ難いと思う高カースト層の人もいるのも現状なのです。農村部では今でも根強いカースト制度が残っています
カースト制度って?
簡単に言うと身分制度のことです。
バラモン(司祭)
クシャトリア(王族・武士)
ヴァイジャ(平民、一般市民)
シュードラ(奴隷)
アチュート(人間あつかいされない人々)
に分けられます。
生まれついて決まる階級で親から子へと受け継がれる身分です。ちなみに、他宗教からヒンドゥー教に入った場合は奴隷シュードラ(奴隷)になります。
また、他の階級の物との婚姻は不可能です。そのため結婚はお見合いが主となっているようです。都市部では自分の階級すら知らずにのびのびと生きたり他階級の結婚があったりしますが、ごくわずかの大都市だけのようです。
アシュヴィンとラトナは結ばれたのか
残念ながら階級制度からいくとすると2人は決して結ばれることの無い階級です。
そしてラトナは実家や妹がいる未亡人。アシュヴィンと結ばれることは何もかも許されないのです。
アシュヴィンはヴァイシャ
ラトナはシュードラという階級なのでしょう。
1つ2人の結ばれる道がのこっているとするのなら、ラストシーンでアメリカに行ったアシュヴィン。それを追いかけラトナが何もかもを捨て追いかけていけるのなら2人は結ばれるのかもしれません。
しかしラトナはデザイナーとしてのその後などを考えた時それは許されないし、妹を残して行くなんてできないのも確かなのです。つまり2人は永遠に結ばれないのでしょう。
まとめ
現在でも残るインドのカースト制度に切り込んだ作品とも言えます。なかなか日本人にはピンと来ない題材ですが、それを恋愛と仕事と差別と絡め分かりやすくなっています。
しかしラストは明るい雰囲気で終わるのも見ていて安心はできる作品です。
インド映画は歌って踊るだけではなく、とても繊細なストーリーなものも多くあるという入門編としてはとても入りやすくなっています。