【映画】彼女がその名を知らない鳥たち
あなたはこれを愛と呼べるか
あらすじ
15歳年上の男・陣治と暮らしながらも、8年前に別れた男・黒崎のことが忘れられずにいる女・十和子。不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きながらも、彼の少ない稼ぎに頼って働きもせずに怠惰な毎日を過ごしていた。ある日、十和子が出会ったのは、どこか黒崎の面影がある妻子持ちの男・水島。彼との情事に溺れる十和子は、刑事から黒崎が行方不明だと告げられる。どれほど罵倒されても「十和子のためだったら何でもできる」と言い続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った彼女は、黒崎の失踪に陣治が関わっていると疑い、水島にも危険が及ぶのではないかと怯えはじめる――。
予告
キャスト
北原十和子:蒼井優
佐野陣治:阿部サダヲ
水島真:松坂桃李
國枝カヨ:村川絵梨
刑事・酒田:赤堀雅秋
野々山美鈴:赤澤ムック
國枝:中嶋しゅう
黒崎俊一:竹野内豊
感想
この作品もYouTubeで予告でよく見かけてて気になってた作品でした。キャストが豪華すぎて絶対面白いだろうなあと思ってました。
原作は少し前にも記事にしたユリゴコロなどをかいた沼田まほかるさん。
ミステリー作品が多くファンも多い方です。
触れ込みが登場人物みんなクズって感じだったのでなんで?っておもってましたけど、見事にくずしかいませんでしたね。
一人の女に執着し続ける奴
好き勝手生きるやつ
女を道具としか見てない奴
様々でてきます。ラストはなんとなーーく想像はついてました。けど、そこまでは予想できなかったわ!ってなります。
救われるようで救われていないそんなオチです
阿部サダヲさんは明るくコミカルな印象が多いけど、この作品を見たらその印象がぶち壊されます。さすがカメレオン俳優ってなります。
愛はここまで行くと愛と呼んでいいのか…そんな思いが出てきます。
松阪桃李がエモい。竹野内豊もえもい
また蒼井優さんの幸がうすそうで男に依存しやすく、それでもってどこか目が離せないそんなところに見ていて惹かれていくんですよね。
映画を見ていると陣治はなんでこんな十和子に依存しているのかっていうのもラストに分かるのですがそれがとても切ないんですよね。
ただ単に好きだった。
それだけなのに、そこまでできる愛の深さすらも切なくなってきます。
ストーリーネタバレ
下品で見た目も性格も悪い男である陣治と暮らす十和子。十和子は仕事もしておらず陣治からお金をせびり気ままにいきていました。
十和子は昔付き合っていた男黒崎のことが忘れられずにいきていました。街中でついつい黒崎に似た人に目を奪われることが多くありました。
十和子は持っている腕時計が壊れ、販売店のデパートにクレームの電話を入れましたが、販売員の態度の悪さに余計に苛立ち電話を切ってしまいました。
夜になると陣治は十和子のために食事を作り、マッサージをしてくれます。十和子のことを1番に考えてくれ、褒めてくれますがそんな陣治にイライラし突き飛ばします。
クレームを入れたデパートから時計売場の主任の男性水島から謝罪の電話があり、これから商品を持って自宅に伺っても良いかと聞かれますが見ず知らずの人を家に入れるのは嫌で十和子は拒否します。
十和子は直ぐにデパートへ行き水島の姿を確認。とてもかっこよく気を良くした十和子は時計の交換を受け入れます。自宅に来た水島はいくつか時計を見せますが業者が選んだ時計だったため、十和子は泣きます。すると水嶋が咄嗟に十和子にキスをしてきました。その時陣治からの電話により水島は逃げ帰ってしまいました。
それから十和子は水島に会うためにデパートへ行き水島が買ったという時計をプレゼントされ、行為に溺れる日々を送ります。
しかし十和子を探して陣治は自転車でウロウロしていました。そんな陣治をみてさらにイラつく十和子。『十和子が心配やったんや』と言う優しい陣治ですが十和子はいやで嫌で仕方ありませんでした。
次の日陣治は十和子の姉のみすずを家に招待し、最近十和子の帰りが遅いと言います。姉にグチグチと言われ十和子はいらつきます。姉が『黒崎さんと会ってたんじゃないの?』といいますが十和子が否定する前に陣治が『それだけは無い』と否定しました。
十和子は其の夜黒崎との思い出の映像を振り返りながら眠ってしまいます。陣治はそっとテレビを消し十和子を夕食に誘います。外食をしながら下品な話や小説家になりたいだとしょうもない話をする陣治に余計嫌気が差します。
その帰り道の電車で知らない男が乗り込む時に陣治を突き飛ばし謝りもせずに平然とした顔をしていました。電車が出発する寸前、陣治はその男を突き飛ばし電車から下ろします。そして倒れる男を冷たい目で見送る陣治に十和子は言い知れぬ恐ろしさを感じました。
ある日水島との不倫に気がついた陣治は十和子を必死に止めます。十和子が辛い目に会う!と言いますが突き飛ばし出かけます。水島との落ち合いタクシーに乗ったところに、陣治が遠くから自転車で追ってくるのが見えとわこはおそろしくなりました。その帰りはそのまま姉のところへ行き自宅には帰りませんでした
美鈴に黒崎が行方不明だということを聞かされます。動揺する美鈴にこの前の会話から陣治は行方不明だったことを知ってるみたいだと十和子に伝えます。十和子は陣治が黒崎を…と思いますが迎えに来た陣治と一緒に帰ることになります。
ある日水島から電話があり水島の妻への嫌がらせや大事な書類がなくなったりすると連絡があり、しばらく会うことは辞めておこうと言われます。しかし気持ちが抑えられない十和子はデパートへ足を運びますがそこで他の女性と歩く水島と自分へのプレゼントが安物だったことを知ります。しかし水島への気持ちが抑えられない十和子は水島に良いように使われます。
十和子は黒崎の妻を訪ねてどうして行方不明か聞きます。黒崎は闇金からお金を借りていたり、妻自身も嫌がらせに当時はあっていたと言います。そこへ妻の叔父である国枝がやってきて『十和子のことを忘れたことはない』といいます。
十和子は昔黒崎の借金のカタに国枝と寝かされたことがあったから、恐ろしくなり十和子は逃げ出します。黒崎は十和子と付き合いながらも現在の妻と交際しており、十和子を捨て現在の妻と結婚した過去がありました。
十和子は当時傷ついており、陣治が黒崎を殺す動機である、十和子を傷つけたという事実がありました。帰宅後に陣治を問いただし陣治は殺害を認めました。十和子は陣治を責めますが、そんなことはどうでもいいと宥めてきました
次の日十和子は包丁を購入し、美鈴に『遠くへ行く』と電話し、水島に会いにいきます。水島にも遠くへ行くことになると伝え、書類探しを手伝えなくてと謝ると、書類は見つかったと言われました。書類が見つからなかった際には責めてきたのに、謝りもせず行為をしようと誘う水島に十和子は過去のフラッシュバックが起こりそのまま包丁で刺してしまいます。
しかし陣治が現れ十和子を止めます。痛がる水島に『警察には俺がやったと言え』といい水島を返します。十和子はその時全てを思い出しました。
水島を刺しながら全てを思い出しました。
黒崎を殺したのは十和子自身でした。
十和子は国枝と無理やり寝かされた後にも、自分の借金返済やお金が貰えることを理由に十和子を差し出そうとしていました。『必ず幸せにする』出来るわけないことを言う黒崎を殺してしまいました。十和子は咄嗟に当時十和子に惚れていた陣治に電話します。
陣治は直ぐに駆けつけ黒崎殺害は自分がやったことにして死体を処理しました。そして十和子からその辛く重い記憶はなくなっていました。
2人は公園で肩を寄せ合い過去について話します。
今回の件で全てを思い出した十和子に陣治は十和子の苦しみを全て背負うといい
「十和子との全てのことが夢のようやった。これからは思い出したこと全部抱えて生きていくんや」
こんなこと抱えて生きていたくないと泣く十和子に陣治は言います。
「生きなあかんのや十和子。十和子が生きててくれな、生きてて笑ってくれな、俺が浮かばれへん。生きとってくれ十和子。俺が助けたるから。」
どうやって助けるのよと必死な陣治に十和子は笑ってしまいます。
陣治は覚悟を決めたように「十和子が思い出したこと全部俺が持ってったるわ。目を覚ませよ十和子。お前俺にごっつい借りが出来るんやで。一生かかってもちょびちょび返すしかない借りや。そんでな十和子。お前子供産め。俺種無しやけど、お前の腹の中には入れるわ。ええか。俺を産んでくれ。もっとまっとうな男見つけて幸せになって俺を産んで俺をとことん可愛がってくれ。必ず入りに行くからな。約束やで十和子。ほなな十和子」
といいながら高台から飛び降りていきました。
陣治は走馬灯のように十和子と出会った時からのことを思い出していました。
陣治は怪我をしていた十和子に一目惚れしていました。そこからストーカーのごとく事後と終わりの十和子にプレゼントを持って会いに行く日々でした。最初は迷惑がっていた十和子でしたがいつの間に陣治と住むことになり、黒崎のことがありました。口汚く陣治を罵る十和子でしたがどこか微笑んでる十和子もいました。
陣治が飛び下りたあと名前の知らない鳥たちが空をひしめき合うように飛び立ちました。
陣治、私のたった1人の恋人
考察
この物語謎はないけど途中途中で解釈が人によって変わったりするんですよね。だから奥が深いという感じです
十和子と陣治
一見なんで一緒にいるのかわからないし、同棲してる理由も理解できませんよね。
十和子が黒崎を殺したその瞬間、陣治はしめた!と思ったと言っています。そこで傷ついた十和子の記憶を改竄するように語りかけ続けたのでしょう。
しかしいつか終わるはずの関係だったと。壊れてしまうといっていました。それは十和子の記憶が戻ったらということでしょう。
いつ戻るかもわからない生活でも幸せだったといってる陣治の顔は清々しいですね
陣治なりの優しさ
わたしはある意味ラストは陣治なりの優しいうそな気がします。変な男に捕まるなよという忠告なんだろうなと。
生まれ変わる気も実はなくて、俺を産め。という嘘なんです。陣治は出来もしないことを堂々という男です。
陣治に借りを作ったのだから、その借りをかえすために我が子を愛せという。我が子を愛するためにはダメ男や既婚者は選択肢にあってはならないのです。
人なりの幸せを十和子に望んでるからこそ、約束という名の呪いをかけたんだと思います。
陣治なりの一世一代の大嘘なんです。
ハッピーエンドかバッドエンドなのか
これは毎回その人によって違います。個人的にはトゥルーバッドエンドかなあと。
幸せかもしれないし、幸せじゃないかもしれない。そんな含みを持った終わり方でした。
陣治はいつか十和子のお腹に戻ってくるとしてそこから2人で幸せに生きていけると思えるならハッピーエンド
十和子が罪を覚えて苦しんで生きていく又は自殺するならバッドエンド
普通に生きていくならトゥルーバッドエンドかなあとおもっています。きっと現実的に考えたら陣治はお腹にはもどってきませんから。でも十和子には忘れるということができるかもしれませんから
まとめ
この映画を見たら愛という価値観が変わると言っていました。たしかに好きな人のためにここまでできてそして生まれ変われると信じている男がいるという点では価値観が変わりました
はたして純愛なのか狂愛なのか歪んでいるのか歪んでいないのか。
見る人の感性を変えてくるこの映画ぜひみてほしいです。全員最低なのにどこか目が離せないそんな作品でした